Undertaleの良さをネタバレなしで伝えたかった
はじめに
インターネットをやっている人々なら『Undertale』という文字列くらい見たことがあるかもしれない。2015年9月15日に発売されたインディーゲームで、古き良き絵柄の「誰も倒さなくていいRPG」という触れ込みで世界的に知られている。
インターネットではたびたび熱量のあるレビューが出てきていたので気になってはいたのだけど、2018年9月15日にswitch版が出たことで手元でも手軽にプレイできるようになったため、先月ようやくプレイした。
その結果、見事にドハマリした。「只者ではないゲームだ…」と呟きつつ4.5周し、感想を読み漁っては理解を深めたり、イメージキャラクターのピンバッジとアートブックを注文したりした。現在はあちこちで「Undertaleはいいぞ」とぶつぶつ言う鬱陶しい人間になっている。
個人的には知人の皆様に是非プレイしてほしいのだが、全世界のUndertaleファンが抱える悩みとして「極力ネタバレはしたくない、でもネタバレ部分にこそ真の魅力がある」というジレンマがある。
本稿では、Undertaleがいかにすごいゲームか、という傍証を示した上で、核心には触れない程度(ファンからすればこれでも許されないかもしれないけど…)の紹介をしたいと思う。
Undertaleの始め方
もし元から興味があって、この序文で背中を押されたのならめちゃくちゃいい機会なので今すぐ始めた方がいい。
最初にリリースされたのは、windowsでもmacでもゲームが遊べるプラットフォーム「steam」なので、PS4もPSVitaもswitchも持っていない人でも気軽に遊べる。
実は使ったことはないのだけど、興味があるならこちらでもやり方は調べます。
また、PS4かVitaをお持ちの方はこちらからでも始められるし、
私はswitch版を買いました。
イケてる奴はみんなやってる
「そもそも聞いたことない、お前しかやってないのでは?」みたいな疑問を持たれる方がいるかもしれない。
実際には強いコンテンツを作っている人がことごとくプレイしている。
あの『Fate』シリーズ*1の生み出し手である奈須きのこも、忙しい中プレイした上で「良作」と評価している。
(該当箇所まで長い上若干ネタバレっぽいことも書いているので読まなくてもいい)
もはや綺羅星のごとく継続的にお茶の間を席巻しているが実は我々側の星野源も去年プレイした上でがっつり語っている。
もう時代を超えたスターとなりつつある米津玄師は"どっぷりハマってしまっていて、勝手にイメージソングを作るみたいなつもりで"1曲作ってしまっている。
米津玄師「Flamingo / TEENAGE RIOT」インタビュー|“終着点”のその先で見つめたもの - 音楽ナタリー 特集・インタビュー
更には『ポプテピピック』のアニメでもオマージュされていたりした。
Undertaleは息長く愛されている
そもそもゲーム自体が発売されたのは2015年9月と3年以上前になる。
ボリュームとしては1回エンディングを見るまで数時間、一通りクリアするのにも20時間もあれば足りるゲームであるが、それにもかかわらず独特のストーリーやキャラクター、それに音楽によってUndertaleは愛され続けている。
作者が『MOTHER』のような日本のゲームに影響を受けていたこともあり、早くから非公式の日本語版は出ていた。作者自身の熱意もあり、2017年には公式に日本語版が発売された。
ファン活動も継続的に続いている。今でもTwitterやpixivでは考察や二次創作が盛んに続けられ*2、バリバリと新しい世界観が開拓されている。
音楽的な活動も盛んであり、有志で作中曲をカバーする企画がこの年末にも開催されている。
少なくとも当分は、いつundertaleを始めようとホットなコミュニティはあるし「過去ジャンル」のような侘しさは感じなくても大丈夫そうだ。
それでも判断材料に不足している場合
できれば内容には触れることは避けたかったが、ある程度の直接的な魅力は書かないと伝わるものも伝わらないので少しだけ紹介したいと思う。
ここから先は若干のネタバレになるのでご注意ください。
クッションとして大川ぶくぶと作者Toby氏の心温まるやりとりを掲載します。
かわいい~
— tobyfox (@tobyfox) December 14, 2018
スーパーに向かったらFZEROのレースでうっかり巻き込んでしまいましたかな
(ちなみに、ニコニコ賞でおめでとうございます!)
キャラクター
公式PVでチラ見えしている通り、キャラクターにいちいち少し癖がある。見かけは単純なドット絵PRGだが、全ての登場モンスターには性格や好きなもの、嫌いなものなどの個性が存在する。
たとえば一番最初に出てくるカエルみたいなモンスターは一見ただの臆病な雑魚だ。だが、話してみると人(モンスター)生について思いを馳せていたり、プレイヤーに助言してくれたりと意外と思慮深い一面がある。
最初からこんな調子でモンスターの個性が押し寄せてくるので、人によってはカロリーオーバーかもしれない。逆に、ちょっとひねくれたPRGが好きな人にはとても向いていると思う。
ちなみにこのサムネイルのお姉さん(?)達はあまり「ニンゲン」について知らないからこんな適当なことを言っているのであまり責めないであげてほしい。
ちなみに、やたらイヌがかわいい上にバラエティ豊かで、しかも全員撫でられる。
イヌによっては撫でると首が伸びる。際限なく伸びるがイヌに問題はないので撫でたいだけ撫でていきたい。
音楽
2ch(もう5chかもしれない)に「みんなで決めるゲーム音楽ベスト100」という企画があるが、2015年どころか2018年ですら上位に何曲かランクインしている。それだけ音楽の人気は高く、根強い。
(参考のために掲載はしておくけど楽曲紹介はガッツリネタバレなのでそこまで見ないように気をつけてください)
特に一部の「難しい」ステージでは非常に評判の高い楽曲が使われており、ごく一部の「死に覚えゲー」となるパートでもテンションを下げずに死に続けられる*3。
Undertaleの楽曲でよく言及される特徴として「ライトモチーフ」の多用が挙げられる。
wikipediaによると
ライトモティーフ(ライトモチーフ、独: Leitmotiv )とは、オペラや交響詩などの楽曲中において特定の人物や状況などと結びつけられ、繰り返し使われる短い主題や動機を指す。単純な繰り返しではなく、和声変化や対旋律として加えられるなど変奏・展開されることによって、登場人物の行為や感情、状況の変化などを端的に、あるいは象徴的に示唆するとともに、楽曲に音楽的な統一をもたらしている。示導動機(しどうどうき)とも。
とあるが、要するに音楽が伏線の一種になっている。
ただ、「Undertale ライトモチーフ」などで検索すると大量にネタバレが発生するのでオススメはしないし、実際プレイしてみないとピンと来ない部分はある。
ここでもあまり詳細を言うのは避けておきたいが、重要なこととしては「音楽が伏線になっている」ので、忘れた頃にガツンと来る。
起動したプレイヤーを一番最初に出迎える曲。非常にシンプルでいかにもRPGの始まりに相応しいが、その後も何度も変奏されて現れる。物語が終わる頃にはUndertaleの思い出が詰め込まれた曲のように感じられるだろう。
この曲はいつも雪が降る街のBGM。素朴でこじんまりとした静かな街の雰囲気を表していて好き。
かと思えば間抜けなモンスターのテーマソングとして、ちょっと間抜けなシンセによる民謡風の曲もあったり。
デザイン
注意:ここから一段階先のネタバレに入ります。
クッションとして何かにつけてUndertaleのイヌを思い出す人々を置いておきます。
undertale is real pic.twitter.com/i2j9UcVohj
— chuck 🐦❄️ (@charlubby) January 3, 2019
もちろんキャラクターや音楽も魅力的だが、個人的にここまでドハマリしたのは、徹底的にプレイヤーをゲームの中に引き込もうとするデザインである。
具体的には「ゲームを普段やっている人」にこそ、今まで当たり前のようにしていた振る舞いを見つめ直すような仕掛けが込められている。
たとえば、印象的なイベントがある。その過程で「ゲームをしている人間」としてはやりがちな行いをする。すると、「おまえ、〇〇しただろ?」とまさにそれをゲーム中で指摘される。
このようなことがゲーム中の要所に仕掛けられていて、すぐに仕掛けが発揮される場合もあるが、忘れた頃に急に存在感を増して立ち現れることもある。
このイベントを配置するデザインが非常にうまい。「プレイヤーは、きっとこの場面ではこういうことをしたくなるんじゃないか」ということが緻密に計算されているためか、つい作者の意図通りに動かされてしまい、見透かされたような反応が返ってくる。
今年出会ったいくつもの優れたゲームでは多かれ少なかれ「いいゲームだなあ」と第3者として感銘は受けた。その一方でUndertaleは上記の仕掛けによってプレイヤーが当事者としてストーリーに組み込まれるのが容易になっている。
そして、プレイヤーがどのように向き合ったかどうかで、ゲーム自体が変質していく。
プレイヤーは、最初は無邪気にRPGとしてプレイするかもしれない。その後ハッピーエンドを見つけて、それに向かって努力するかもしれない。その先には、何があるのか。たとえば「RPGとして」やり直す、とはどういうことなのか。
プレイヤーの決断にUndertaleは応えてくれる。自分のしたことによって、別のゲームではないかと思う程に異なる結末が待っている。その重大さをここまで自分事として受け入れさせられたゲームは自分にとってはUndertaleが初めてだった。
正直な所、本当に最後までやってしまってよかったのかは今でも分からない。Undertaleはそれまでのゲームでは得難かった、深い後悔と切り離せない経験を植え付けてくる、「印象深い」としか言えないゲームだった。
まとめ
やりましょう。
ここまで読んでくれるようなありがたい人(で数年以内に何か親交のあった人)にはプレゼントしてでもオススメする気持ちはあります。
最後に作者の分身であるうざいイヌの絵を貼って終わります。
隙間風パラレルライン(2/24)
本番まであと2週間!
— 舞台『隙間風パラレルライン』公式 (@gekidan_sukima_) 2018年2月10日
お席には限りがあります。是非お得な前売り券をご利用下さい!https://t.co/KU8vJfGkbl
★2/24(sat.) 18:30-
★2/25(sun.)13:00-/17:00-
※前売り料金¥1,000は当日ご用意ください。 pic.twitter.com/41iwvX3stQ
演劇に詰め込むべきではない量の台詞を詰め込んでいる
「ある」としていたテーマが劇中で表現されていない
物語として尺が足りない
幹の部分に力を入れて欲しい
そういえば前ボスから論文の書き方についてこんな指導を頂いたことがある。曰く「論文は、魔王の紹介→世界を救う方法を見つけました→世界は救われた!とスムーズに読み進められるようなアウトラインにすべきで、勇者の故郷の鍛冶屋のおばちゃんの得意な料理みたいな話題に立ち寄ってはいけない」と。
— sho_yokoi (@sho_yokoi) 2016年1月28日