ほしたべよ見聞録

ほしたべよのほしたべよによるほしたべよのためのブログ

Undertaleの良さをネタバレなしで伝えたかった

f:id:starwaterpepper:20190106010831j:plain

はじめに

インターネットをやっている人々なら『Undertale』という文字列くらい見たことがあるかもしれない。2015年9月15日に発売されたインディーゲームで、古き良き絵柄の「誰も倒さなくていいRPG」という触れ込みで世界的に知られている。

 

インターネットではたびたび熱量のあるレビューが出てきていたので気になってはいたのだけど、2018年9月15日にswitch版が出たことで手元でも手軽にプレイできるようになったため、先月ようやくプレイした。

その結果、見事にドハマリした。「只者ではないゲームだ…」と呟きつつ4.5周し、感想を読み漁っては理解を深めたり、イメージキャラクターのピンバッジとアートブックを注文したりした。現在はあちこちで「Undertaleはいいぞ」とぶつぶつ言う鬱陶しい人間になっている。

個人的には知人の皆様に是非プレイしてほしいのだが、全世界のUndertaleファンが抱える悩みとして「極力ネタバレはしたくない、でもネタバレ部分にこそ真の魅力がある」というジレンマがある。

本稿では、Undertaleがいかにすごいゲームか、という傍証を示した上で、核心には触れない程度(ファンからすればこれでも許されないかもしれないけど…)の紹介をしたいと思う。

 

Undertaleの始め方

もし元から興味があって、この序文で背中を押されたのならめちゃくちゃいい機会なので今すぐ始めた方がいい。

 

 

最初にリリースされたのは、windowsでもmacでもゲームが遊べるプラットフォーム「steam」なので、PS4PSVitaもswitchも持っていない人でも気軽に遊べる。

実は使ったことはないのだけど、興味があるならこちらでもやり方は調べます。

store.steampowered.com

 

また、PS4かVitaをお持ちの方はこちらからでも始められるし、

store.playstation.com

 

私はswitch版を買いました。

ec.nintendo.com

 

イケてる奴はみんなやってる

「そもそも聞いたことない、お前しかやってないのでは?」みたいな疑問を持たれる方がいるかもしれない。

実際には強いコンテンツを作っている人がことごとくプレイしている。

 

あの『Fate』シリーズ*1の生み出し手である奈須きのこも、忙しい中プレイした上で「良作」と評価している。

(該当箇所まで長い上若干ネタバレっぽいことも書いているので読まなくてもいい)

www.4gamer.net

 

もはや綺羅星のごとく継続的にお茶の間を席巻しているが実は我々側の星野源も去年プレイした上でがっつり語っている。

miyearnzzlabo.com

 

もう時代を超えたスターとなりつつある米津玄師は"どっぷりハマってしまっていて、勝手にイメージソングを作るみたいなつもりで"1曲作ってしまっている。

米津玄師「Flamingo / TEENAGE RIOT」インタビュー|“終着点”のその先で見つめたもの - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

 

更には『ポプテピピック』のアニメでもオマージュされていたりした。

www.gamespark.jp

 

 

Undertaleは息長く愛されている

そもそもゲーム自体が発売されたのは2015年9月と3年以上前になる。

ボリュームとしては1回エンディングを見るまで数時間、一通りクリアするのにも20時間もあれば足りるゲームであるが、それにもかかわらず独特のストーリーやキャラクター、それに音楽によってUndertaleは愛され続けている。

f:id:starwaterpepper:20190106115142j:plain

作者が『MOTHER』のような日本のゲームに影響を受けていたこともあり、早くから非公式の日本語版は出ていた。作者自身の熱意もあり、2017年には公式に日本語版が発売された。

ファン活動も継続的に続いている。今でもTwitterやpixivでは考察や二次創作が盛んに続けられ*2、バリバリと新しい世界観が開拓されている。

 

音楽的な活動も盛んであり、有志で作中曲をカバーする企画がこの年末にも開催されている。

www.youtube.com

 

少なくとも当分は、いつundertaleを始めようとホットなコミュニティはあるし「過去ジャンル」のような侘しさは感じなくても大丈夫そうだ。

 

それでも判断材料に不足している場合

できれば内容には触れることは避けたかったが、ある程度の直接的な魅力は書かないと伝わるものも伝わらないので少しだけ紹介したいと思う。 

ここから先は若干のネタバレになるのでご注意ください。

クッションとして大川ぶくぶと作者Toby氏の心温まるやりとりを掲載します。

 

キャラクター

公式PVでチラ見えしている通り、キャラクターにいちいち少し癖がある。見かけは単純なドット絵PRGだが、全ての登場モンスターには性格や好きなもの、嫌いなものなどの個性が存在する。

たとえば一番最初に出てくるカエルみたいなモンスターは一見ただの臆病な雑魚だ。だが、話してみると人(モンスター)生について思いを馳せていたり、プレイヤーに助言してくれたりと意外と思慮深い一面がある。

最初からこんな調子でモンスターの個性が押し寄せてくるので、人によってはカロリーオーバーかもしれない。逆に、ちょっとひねくれたPRGが好きな人にはとても向いていると思う。 

www.youtube.com

ちなみにこのサムネイルのお姉さん(?)達はあまり「ニンゲン」について知らないからこんな適当なことを言っているのであまり責めないであげてほしい。

 

ちなみに、やたらイヌがかわいい上にバラエティ豊かで、しかも全員撫でられる。

イヌによっては撫でると首が伸びる。際限なく伸びるがイヌに問題はないので撫でたいだけ撫でていきたい。

f:id:starwaterpepper:20190105225608j:plain

 

音楽

2ch(もう5chかもしれない)に「みんなで決めるゲーム音楽ベスト100」という企画があるが、2015年どころか2018年ですら上位に何曲かランクインしている。それだけ音楽の人気は高く、根強い。

(参考のために掲載はしておくけど楽曲紹介はガッツリネタバレなのでそこまで見ないように気をつけてください)

www21.atwiki.jp

特に一部の「難しい」ステージでは非常に評判の高い楽曲が使われており、ごく一部の「死に覚えゲー」となるパートでもテンションを下げずに死に続けられる*3

 

Undertaleの楽曲でよく言及される特徴として「ライトモチーフ」の多用が挙げられる。

wikipediaによると

ライトモティーフ(ライトモチーフ、独: Leitmotiv )とは、オペラや交響詩などの楽曲中において特定の人物や状況などと結びつけられ、繰り返し使われる短い主題や動機を指す。単純な繰り返しではなく、和声変化や対旋律として加えられるなど変奏・展開されることによって、登場人物の行為や感情、状況の変化などを端的に、あるいは象徴的に示唆するとともに、楽曲に音楽的な統一をもたらしている。示導動機(しどうどうき)とも。

とあるが、要するに音楽が伏線の一種になっている。

ただ、「Undertale ライトモチーフ」などで検索すると大量にネタバレが発生するのでオススメはしないし、実際プレイしてみないとピンと来ない部分はある。

ここでもあまり詳細を言うのは避けておきたいが、重要なこととしては「音楽が伏線になっている」ので、忘れた頃にガツンと来る。

 

www.youtube.com

起動したプレイヤーを一番最初に出迎える曲。非常にシンプルでいかにもRPGの始まりに相応しいが、その後も何度も変奏されて現れる。物語が終わる頃にはUndertaleの思い出が詰め込まれた曲のように感じられるだろう。

 

www.youtube.com

この曲はいつも雪が降る街のBGM。素朴でこじんまりとした静かな街の雰囲気を表していて好き。

www.youtube.com

かと思えば間抜けなモンスターのテーマソングとして、ちょっと間抜けなシンセによる民謡風の曲もあったり。

 

デザイン

注意:ここから一段階先のネタバレに入ります。

クッションとして何かにつけてUndertaleのイヌを思い出す人々を置いておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろんキャラクターや音楽も魅力的だが、個人的にここまでドハマリしたのは、徹底的にプレイヤーをゲームの中に引き込もうとするデザインである。

具体的には「ゲームを普段やっている人」にこそ、今まで当たり前のようにしていた振る舞いを見つめ直すような仕掛けが込められている。 

 

たとえば、印象的なイベントがある。その過程で「ゲームをしている人間」としてはやりがちな行いをする。すると、「おまえ、〇〇しただろ?」とまさにそれをゲーム中で指摘される。

このようなことがゲーム中の要所に仕掛けられていて、すぐに仕掛けが発揮される場合もあるが、忘れた頃に急に存在感を増して立ち現れることもある。

このイベントを配置するデザインが非常にうまい。「プレイヤーは、きっとこの場面ではこういうことをしたくなるんじゃないか」ということが緻密に計算されているためか、つい作者の意図通りに動かされてしまい、見透かされたような反応が返ってくる。

今年出会ったいくつもの優れたゲームでは多かれ少なかれ「いいゲームだなあ」と第3者として感銘は受けた。その一方でUndertaleは上記の仕掛けによってプレイヤーが当事者としてストーリーに組み込まれるのが容易になっている。

f:id:starwaterpepper:20190106010958j:plain

そして、プレイヤーがどのように向き合ったかどうかで、ゲーム自体が変質していく。

プレイヤーは、最初は無邪気にRPGとしてプレイするかもしれない。その後ハッピーエンドを見つけて、それに向かって努力するかもしれない。その先には、何があるのか。たとえば「RPGとして」やり直す、とはどういうことなのか。

プレイヤーの決断にUndertaleは応えてくれる。自分のしたことによって、別のゲームではないかと思う程に異なる結末が待っている。その重大さをここまで自分事として受け入れさせられたゲームは自分にとってはUndertaleが初めてだった。

 

正直な所、本当に最後までやってしまってよかったのかは今でも分からない。Undertaleはそれまでのゲームでは得難かった、深い後悔と切り離せない経験を植え付けてくる、「印象深い」としか言えないゲームだった。

 

まとめ

やりましょう。

ここまで読んでくれるようなありがたい人(で数年以内に何か親交のあった人)にはプレゼントしてでもオススメする気持ちはあります。

 

最後に作者の分身であるうざいイヌの絵を貼って終わります。

f:id:starwaterpepper:20190106115927j:plain

 

*1:きちんと触れたのがFGOくらいなので、細かい部分には踏み込みません

*2:基本的には既クリア前提なので見に行くことは絶対におすすめしません。二次創作はクリア済みでも人を選ぶかもしれませんが…。

*3:個人差があります

隙間風パラレルライン(2/24)

 

 行ってきました。皆様お疲れ様でした。
 全体としてはとても限られた資源の中で頑張っている、という思いが伝わってきました。
 ただ、それでももう少しよくなるといいな、と思ったところがいくつか見受けられました。
 アンケートにも少しだけ書かせて頂いたのですが、それだけでは言葉足らずに終わってしまったかもしれない…と反省しているため、今後のためになれば、とメモをここに置いておこうと思います。
(以下は全て私の主観であり、当然それ以外の感想も十分にありえます)
 
 
演劇に詰め込むべきではない量の台詞を詰め込んでいる
 もしかしたら、本来は小説にするべきものを演劇にコンバートした結果でしょうか。(キャラ設定的に不自然なキャラも含め)ほぼ全員が喋りまくっており、説明口調が多すぎるという印象を受けました。
 もしかしたら、舞台装置や時間の都合上、背景やキャラの動きで説明しきることが難しかったため言葉で説明せざるを得なかったのかもしれませんが、まずこの部分が気になりました。
 
「ある」としていたテーマが劇中で表現されていない
 事前の宣伝において、短編集で1つのテーマがあることをはっきり打ち出しつつ、「繋がり(6次の隔たり)」というテーマが演劇で説明できていたかというとちょっと厳しかったように思えます。
 前の章から次の章における繋ぎは世界が何かしらの意味で繋がっていることを微かに暗示するに留まっており、観客(私)は「では、最後に今までの話を全て繋げるエピソードが入るのだろう」と考えておりました。
 ただ、最終的にはそのようなエピソードが挿入されることはなく、そのまま全体で(突然はしゃいだ雰囲気で)エンディングを歌って終演したことで、最終的な回収が行われずに物語が終わってしまったような印象を受けました*1。また、そもそも一部の章間の関連性については説明されてようやく「そうなの?」と分かるレベルの関連度合いであったことから、(あくまで個人的にはですが)繋がりを見出すこと自体難しい箇所があったかもしれません。
 そして何よりも、仮に登場人物全員が「6次の隔たり」として繋がりがあったとしても、ただ「なんとなく繋がっている」だけではなく、この繋がりが物語においてどのような役割を果たし、物語中のどのような「課題」を解決してくれるのかがきちんと表現されていないのであれば、テーマとしての意味があったかどうかははっきり言えないのではないか、と考えております。
 まとめると、今回の演劇において「繋がり」はテーマとして掲げるには説明が不十分で、掲げることで却って解釈のミスリードが発生し最後に消化不良を起こす原因になりかねないのではないか…という恐れを感じています。
 
物語として尺が足りない
 前述通り、最後全体の回収が入るかと予想していたものの結局回収されなかったことで、結果として各章にある程度の物足りなさを感じてしまいました。
 こちらも人員的な都合(みんなでやりたい、各人が練習する時間を確保できない)があるのかもしれませんが…。
 
幹の部分に力を入れて欲しい
 以前Twitterでバズったツイートで記憶に残っているものがあるので掲載しておきます*2
  たとえば公式Twitterなどでは、どちらかと言えば「枝葉」に当たるような、マニアックなレベルのキャラクター紹介が行われているように感じられました。
 「キャラクターに意外な設定のギャップがある」というのはある程度はスパイスとして有効ですが、実際の演劇においてもかなり細かい設定に対する言及が多かったため、結果として「幹(世界観・テーマ)」への焦点がぼやけてしまったように感じられました。
 
良い所もあった
ここまでつらつらと書いてしまいましたが、もちろん良い所・面白かった所もありました。
たとえばChapter1の謎のふたりはいい感じに謎でしたね。あるいはChapter3のすれ違いをスライドで表現しようとするのはかなり頭のいい試みだと思います。
他にも人それぞれに面白かった部分もあるし、好きだった部分があると思うのでみんなSNSで共有しましょう*3
 
まとめ
 もちろん部分的には面白いパートもありました。それでも、「やりたいこと」に対して人員・時間・金銭諸々の折り合いがつかないことが積み重なった結果、全体的な完成度に響いてしまった、という印象を受けました。
 だからといって人的資源を増やす、というのはそう簡単にはできないと思います。たとえば、メンバーのキャパを把握した上でそのキャパに収まる範囲でしっかり練って表現していく、ということが大事なんじゃないかと思いました。
 それでも「仕事など諸々の事情があっても(比較的重たい)趣味を両立できる」というのはそれだけでも価値があることだと思います。だからこそ、皆様の今後がより良い方向に向かうことをお祈りしております。

*1:役者の命名に規則があることや多少のスピンオフがあることは、「繋がり」をテーマとした短編集でなくてもしばしば行われていることであり、観劇中に分かる範囲では特筆すべき「繋がり」は存在しないように感じられました

*2:これは論文の話ですが、表現一般にも言えるかと思います

*3:もしここまでわざわざスクロールしてくださる稀有な方であれば特に